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合理的に経理・税務を行う第3回
~電卓片手に月次決算書を一緒に見てみましょう~
2009年03月12日

前回は、クリニック経営者として必要な経理・税務処理を効率的に行う方法として、毎月かんたんにできる月次決算書でのチェックポイントを紹介しました。

長い文章になりますが、今回は実際に月次決算書からどのようにして経営状況を把握するか、実際の決算書数値を用いてご説明したいと思います。ぜひ電卓を片手に、一緒にご自身のクリニックの月次決算書も見てみましょう。


前回ご紹介した2つのチェックポイント


■チェックポイント1: 月次の「現金増減額」を把握する
 現金増減額とは、月次の医業収入に対して手元に残る現金の増減額、つまり
医業収益—(変動費+固定費—減価償却費)—(借入返済等支出項目+生活費)
となります。増加だったのか減少だったのかをまず把握します。

■ チェックポイント2: 大まかな資金繰りの安全性を確認する
次に、大まかな資金繰りの安全性をチェックします。
現金増加だった場合、
(現金増加額+現預金額)> 総支出額の3ヶ月分 
であれば、運転資金が十分確保されていると言えます。


まずは、原価及び経費における固定費・変動費の状況を整理します。費用及び仕入から、変動性の高いものを変動費、家賃や給与など変動しにくいものを固定費に振り分けます。但し一般的なクリニックにおいては、薬品や検査委託などにかかる外注費など仕入に相当するもののみ変動費に振り分けるのが適正だと考えられます。

 
次にチェックポイント1でご紹介した現金増減額を算出します。損益計算書に表記される利益及び損失は実際の現金増減とは異なります。特に法人ではなく個人で開業されている場合、費用に経営者の報酬が含まれない為、決算書上の損益と現金増減の差が大きくなる可能性が高いといえます。

 
月次の現金増減が把握できたら、現在の現金保有額が資金繰りを行うにあたって、十分かどうか確認します。今回のサンプルの場合安全な運転資金額に対して約600万円程度の余剰資金があるので十分な安全性を確保しているといえます。

 
また、ここまでは、現金増減の状態と運転資金の確保状況の確認に関してご説明しましたが、あわせて、収益状況の健全性や開業して日が浅い先生の為の、目標設定となる指標の確認方法もご説明します。


一般的な収益状況の確認数値として、損益分岐点があります。これは固定費÷(1-変動比率)で算出する事ができ、今回の場合353万÷0.93=380万円となります。但し損益計算書上の利益が実際の現金増減と異なるように、損益分岐点を超えている事と十分な収入が確保できていることとはイコールではありません。あくまで損益分岐点は事業継続にあたり自腹を切っていないかどうかの基準点になります。

実際には、きちんと生活費が捻出でき借入金が返済できる水準=収支分岐点を知る必要があります(現金増減額同様、個人で開業されている先生の場合、損益分岐点との乖離が大きくなります)。収支分岐点は前述した総支出額を用いて算出することになります。収支分岐点={固定費-減価償却費+(借入等返済額+生活費)}÷1-変動比率となり、今回の場合433万÷0.93=466万円で、収入が、収支分岐点を大幅に上まわっている為、十分な収入が確保できているといえます。開業したら、まずはこの収支分岐点を超える収入を上げる事を意識する事が重要だといえます。

このように、月次決算書から資金状況の確認や数値目標の設定など、経営判断における重要な指標の確認をする事は、さほど難しい作業ではありませんので、月次決算を毎月きちんと行った上で、決算書を経営の安定化にご活用いただければと思います。


なお、アットタックスでは今回ご説明した、チェックポイントが毎月簡単に確認できるツールを提供しています。今回の記帳代行・税務申告一括サービスの詳しい内容はこちらをご覧ください。

次回(3月26日配信)は、第11回日本在宅医療学会大会に参加してきましたので、そのときの様子をご紹介させていただきます。

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